●横浜市向陽学園

分野

(対象種別)

運営主体  所在地 使用評価項目

報告書作成日

(運営委員会開催日)

社会的養護

(児童自立支援施設)

横浜市

横浜市保土ケ谷区 

全社協版

2014年3月10日

 
報告書全体はこちらからダウンロードできます。
公表用評価結果報告書【横浜市向陽学園】.pdf
PDFファイル 481.6 KB

報告書より抜粋:総合評価

 

【施設の概要】

 

児童自立支援施設「横浜市向陽学園」は、横浜市が設置・運営を行う公立の児童福祉施設で、横浜市の政令指定都市化に伴い昭和34年に設立され、現在まで50年以上の歴史を持つ施設です。

児童自立支援施設は、児童福祉法第44条に基づく児童福祉施設の一つで、家庭環境や学校になじめない等の理由から、非行またはその恐れなど社会的不適応のある、小学生から18歳未満の児童を対象に、必要な学習生活指導を実施して児童の自立を支援していくこと目的としています。また、家庭裁判所の審判による保護処分をはじめ、家庭内での虐待など入所経緯はさまざまですが、当該施設への入所はすべて児童相談所の措置決定に基づくものとなっています。全国で58施設と数少なく、外部のさまざまな刺激を避けるため地域社会との交流を一旦制限し、限られた生活範囲の中で規則正しい生活を送りながら、学業やスポーツ、作業を通じて社会的ルールを学ぶこと、子ども自身の意欲や耐性を高め自尊心の向上を図ることが、この施設の大きな特長です。

「横浜市向陽学園」は、相鉄線「西谷駅」からバスで10分程度、住宅街に隣接し付近は木立や畑もある自然豊かな環境に立地しています。入所児童は男子のみが対象で、現在は小学校高学年から18歳未満までの児童24名ほどが在籍し、施設内にある4つの寮で生活しています。また、開設時から「夫婦小舎制」を採用し、各々の寮に寮長・寮母が住み込みで生活を共にする家庭的な環境で支援を行っています。

施設の敷地の中には、グラウンドやプール、体育館(講堂)があり、子どもたちは野球や水泳、卓球などのスポーツに毎日取り組んでいるほか、野菜や草花の栽培など農作業も実施しています。また、施設内には小・中学校の分校も併設され、子ども一人ひとりの状況に合わせて学習できるようになっています。

施設では、支援職員と教職員が相互に連携しながら、さまざまな課題を持つ子どもたちと正面から向き合い、心身の健全な成長と自立に向けた支援に尽力しています。

 

 

●特長・優れている点

 

1】夫婦小舎制による家庭的な環境の提供と、子どもの存在を大切にした支援

 

向陽学園では、昭和34年の開設当初から「夫婦小舎制」を採用し、入所児童の支援を行っています。

夫婦小舎制は、施設内の各寮に寮長・寮母夫婦が住み込み、子どもたちとの暮らしを通じて支援を行う、児童自立支援施設に特有の支援形態です。夫婦小舎制は、寮長・寮母の役割を担う職員に対し、大きな負担を求めることにもなりますが、その反面、より家庭的で暖かい雰囲気を提供できることや、家族的な切れ目のないかかわりを通じて子どもの安心感や家庭への帰属意識につながるといった効果が期待できることが、その大きな特長です。しかしながら近年では、週休2日制の導入など労働環境の変化に伴い徐々にその事例は減少し、この支援形態を有する児童自立支援施設は20104月現在で全体の3割程度となっています。

向陽学園では、4寮すべてにおいて夫婦小舎制を導入し、各寮に寮長夫妻とその家族が入所児童と一緒に暮らしています。各寮では、一人ひとりの子どもを「かけがえのない家族の一員」として温かく迎え入れています。子どもたちは日々の振り返りとして「日記」を書いていますが、寮長自らその日記に毎日返事を書いて、子どもを優しく励ましながら、その成長を見守っています。さらに、「父・母の役割」の側面を持ちつつ、お互いを信頼しあう寮長夫妻の存在は、子どもたちが将来築くであろう「夫婦・家庭のあり方」のモデルにもなっています。

また、当施設では、「子どもの最善の利益のために」「よりよく生きること(well-being)」の実現に向け、子どもの生育歴や家庭環境、過去の経緯等を踏まえ、将来の目標や自立に向けた課題を職員間で共有し、子どもの最善の利益を守るべく奮励しています。このような取り組みは、児童福祉・社会的養護の要旨である「小舎による家庭的養護の実践」の具現化として、評価できると考えます。

 

 

2】子ども一人ひとりの状況に合わせた「学校教育との連携」

 

当該施設では、平成234月より施設内に横浜市立新井小中学校の分校「桜坂分校」を併設し、施設敷地内で学校教育を受けられるようになっています。授業は子どもの学力や就学状況等に応じて、少人数または個別に学習指導を行い、子どもが学習意欲を持ち理解を深められるよう、柔軟に対応しています。

授業では学習指導を教職員が行うほか、必ず施設職員も同席し、子どもに変化があった場合には授業を離れて個別対応を実施するなど、子どもの状態に応じたケアを行っています。また、毎朝・夕に施設職員と教職員が一同に会して打ち合わせ・引き継ぎを実施し、子どもの夜間の様子や学校での状況等について情報交換をし、一日を通じての子どもの状態把握を行うとともに、タイムリーで一貫性のある支援を実践しています。加えて月1回定例の「合同連携会議」を開催し、子どもの進路や学習状況等についても意見交換を行っています。分校の併設により、教育と生活支援が分離されることで効果的な学習指導が実施され、子どもの学力や学習意欲の向上とともに、子どもが明るく活発になり、社会性獲得に至った事例なども報告されています。さらに、施設・学校での連携や個別対応等を通じて、子どもの精神的な安定が図られる効果も確認されています。

そのほか、小・中学本校のPTAの協力で地域清掃を実施したり、施設近隣の商店の支援を受けて職場体験を行っています。学校教育の取り組みを通じて子どもが進路選択や社会体験の機会を得られるようにするとともに、地域との交流や施設理解の促進、児童福祉の普及啓発につなげるなど、子どもを中心に施設・学校・地域が相互連携を図ることで、大きな相乗効果を生み出しています。

 

 

●今後も期待される点

 

年長児童への継続的な支援と地域移行の円滑化に向けた取り組み

 

児童自立支援施設は、一定期間の支援を通じて子どもの心身の健全な成長と自立を促す「通過施設」としての機能を有することから、支援のひと区切りの目安として、中学卒業を機に施設を退所する場合が多くなっています。しかしながら当施設では、自宅復帰が困難で中学卒業後も退所できないケースや、社会適応に向けた支援の継続が必要な場合など、さまざまな事情から退所に至らない年長児童に対し、入所継続して支援を行う取り組みを実施しています。

当施設では、4寮のうちの1個所を年長児寮として提供しており、現在も複数名の子どもが高校やサポート校(高校卒業程度の学習支援を行う教育機関)などに通いながら生活を送っています。子どもたちは、この寮での生活を通じて退所後の生活への移行に向けた準備を行っています。子どもの自主性を尊重し、必要時の外出はもとより、アルバイトも認めているほか、金銭管理に関する助言指導や生活上の問題に直面したときの対処方法など、退所後の社会生活への円滑な移行に向け、支援を行っています。

本来、施設内処遇が基本で、地域社会との交流を隔てた環境にある児童自立支援施設を退所し、短期間で社会適応を図ることには大きな負担があります。地域生活に円滑に適応するための場所として中間的機能を持つ年長児寮を提供し、実生活に近い環境で支援を行う取り組みは、今後もさらに必要性が高まることが予想されます。子どもの自立と円滑な社会適応の促進に向け、今後充実化を図る取り組みが期待されます。

 

 

●課題となる点(さらなる取り組みが期待される点・改善が求められる点)

 

1】施設の実情に合わせた業務手順の統一化と、組織的な検証・評価・改善の仕組み作りを

 

現在施設では、設置・運営主体である横浜市の規定に則り、法令を遵守した適正な施設運営に努めていますが、事故防止や子どものプライバシー保護に関するマニュアルは未策定となっているほか、感染症対策や苦情対応については、マニュアルはあるものの十分な活用がなされておらず、職員間で対応の統一化が図られていない場面も散見されています。また、職員倫理規定および服務規律、人事考課における期待水準、職員の研修計画等についても、横浜市職員の規定に従って周知・共有していますが、児童福祉の特性や施設支援の実情に即した内容となっていないことから、実際の支援場面でうまく機能しない場合や、対応に齟齬をきたす状況も散見されています。今後は、横浜市の規定をベースに、児童福祉の実情や施設支援の特性に応じたマニュアルの策定とともに、職員間で統一した対応手順の明確化を図るための取り組みが望まれます。

そのほか、業務手順や研修成果の見直しをはじめ、苦情やヒヤリハット事例の統計と分析、性加害・暴力などの重要課題に対する要因分析と改善策検討など、さまざまな場面で十分なアセスメントが行われていないために、対策や改善につながりにくい状況も散見されています。施設における課題を十分に把握し、組織全体で分析・検討して改善に生かす仕組みづくりが期待されます。

 

 

2】心理面や障がいなど、子どもの課題対応に向けた、さらなる研修体制の充実化を

 

児童自立支援施設では、社会的不適応のある子どもに対し、必要な学習生活指導を実施して児童の自立を支援していくこと目的ですが、近年の状況においては、非行などの問題に加え児童虐待や発達障がいなど、心理面の支援や医療対応を要する子どもの入所が増えつつあり、当施設においても大きな課題となっています。今後、子どもを取り巻くさまざまな課題に対応していくためには、精神科医療や心理的支援、障がいの理解など、さまざまな知識修得に向けた研修機会の確保が必要と思われます。また、学校教育との連動や子どもの退所後の進路選択をはじめ、さまざまな場面で子ども自身が適切な自己決定を行っていく上でも、子どもの特性や問題行動の背景を理解していくことは非常に重要です。今回の調査においても、複数の職員から研修内容の充実化を望む声が聞かれました。

さらなる子ども一人ひとりの自立の実現に向け、施設全体で教育・研修体制の充実化を図る取り組みが期待されます。

 

 

3】安全面への配慮と子どもの生活状況に合わせた設備・環境の充実化を 

 

子どもたちが生活する寮は、改築後30年以上が経過し、トイレや浴室、空調など生活にかかわる設備面で改善が必要な状態となっています。トイレや浴室は複数の児童が同時に利用できるよう作られていますが、性加害の問題など個別対応が必要な現状では使い勝手が悪く、支援場面の実情に適さない状況となっています。また、現在はリービングケアの一環として、子どもの「食事面の自立」の必要性を踏まえた調理プログラムの実施に取り組んでいますが、各寮の調理スペースは手狭で設備も乏しく、実施しにくい状態となっています。支援場面においても、子ども同士のトラブル等により個別対応を要する場合でも、居室が大部屋であるほか、子どもが一人になれる場所やクールダウンのための個別スペースは確保されていません。

そのほか、施設の調理棟については、壁面の損傷や排水設備、調理器具の不具合など、調理設備の改修については衛生管理の観点からも喫緊の課題となっています。子どもの安全を確保し、児童一人ひとりの健全な成長を支援するための環境整備に向け、早急な対応が望まれます。

お問い合わせ

TEL: 050-3786-7048 

FAX: 045-330-6048

E-mail:

 daihyo★hyoukashimin.jp

 ※★を@に変えて送信

住所

〒231-0003

横浜市中区北仲通3-33

関内フューチャーセンター153