【施設の概要】
白百合乳児保育園は、京浜急行線「神奈川新町」駅西口から徒歩4分ほどのところにあります。園の周囲は住宅地ですが、近くに広い公園が複数あります。園舎は鉄筋コンクリート3階建てで、園庭は広くありませんが、2階の乳児室の中央部には21畳のほふく室、3階には広い遊戯室があり、トイレや遊具を設置した屋上遊戯場もあります。
定員は、90名(0~5歳児各15名)で、開園時間は、平日は7時15分~19時15分(0歳児は18時30分まで)、土曜日は7時15分~15時30分です。
運営法人は、「社会福祉法人白百合会」で、同法人は1971年(昭和46年)に設立され、翌1972年(昭和47年)横浜市初の産休明けから入れる認可乳児保育園(0~2歳児)として、当園を開設しました。その後、1986年(昭和61年)に幼児保育(3~5歳児)も開始しましたが、横浜市の乳児保育園の草分けとして、40年の歴史を持っています。現在では、ほかに上末吉白百合保育園、横浜市から民間移管した丸山台保育園、白百合乳児保育園の分園から独立した第二白百合乳児保育園を運営し、2013年(平成25年)4月には横浜市から西川島保育園の運営を継承することになっています。
当園の保育理念は「子どもの最善の利益を求める『子どもの権利条約』を遵守し、児童憲章、児童福祉法を守り発展させていきます」など4項目を掲げ、保育方針として「子どもたちが、心身ともに健やかに成長・発達できる保育内容・良好な環境を保障します」など3項目を定め、理念・方針の下に保育目標として、「元気に遊べる子ども」「自分を表現し、工夫し、考える子ども」「仲間と共感しあう、心豊かな子ども」の3つを掲げています。
●特長・優れている点
【1】子どもたちは元気よく工夫して遊ぶ中で、やさしい子どもに育っています
子どもたちは、遊ぶ時間が十分にあります。朝の会が終わると、天気のよい日は、保育室が空っぽになってしまうくらい、散歩や公園遊びによく出かけます。すぐ近所の3つの公園で鬼ごっこをしたり、遊具で遊んだり自分のやりたいことをしています。幼児は少し離れた「白幡の森」まで出かけ、自然の中で草はらをかけ回り斜面を登り、落ち葉や枯れ枝などで工夫して遊ぶこともあります。ときには異年齢児のクラスで公園に行くこともあり、そんなときは、年上の子どもが年下の子どもと手をつなぎ、手をつなぐ子どもがいなくて残念がる子どもがいると、友達が「3人でつなげばいいよ」と教えることもあります。保育士は、危険なことがない限り、子どもたちが考えて遊べるように、指示を少なくして見守っています。観察した日には、幼児が公園で0歳児と一緒になったら、0歳児が帰るまでブランコや大型滑り台を使わない約束を、当然のように受け入れていました。5歳児が大縄跳びをしたり、ブランコでダイナミックな漕ぎ方をしたりしているのを見ると、身体能力の高さがうかがえましたし、友達や年下の子どもに遊びのやり方を教える子どももいました。
園内でも21畳のほふく室で、1歳児が部屋いっぱいに新聞紙を細くちぎって遊び、ひとしきり遊んだ後は、片付けを兼ねて1人ずつビニール袋に丸めて入れてそれをボールにしていましたし、さらにその後の時間は、それにひもをつけて犬に見立てて「ポチの散歩」という遊びを作り出していました。乳児では保育士が一連の動きをリードしていますが、子どもたちに「何をしたいか」相談しています。
このように子どもたちがのびのびと遊ぶのを、保育士は温かく見守り、子どもがどうしたらよいか考えることを大切にしています。その中で、年下の子どもは年上の子どもに憧れを持ち、年上の子どもは年下の子どもにやさしく接し、保育目標が具現化されています。
【2】食べることを大切にした保育をしています
園の献立は運営法人の4園の栄養士が会合を持ち、相談して作成しています。食材は地元の商店から旬のものを吟味して購入しています。給食とおやつはすべて手作りで、子どもたちがおいしく食べやすいように工夫して調理をしています。子どもたちは給食が大好きで、乳児もおかわりをしています。また、幼児は白米の主食を持参している子どもが多いですが、午後の手作りのおやつに、栗ごはん、すいとん、ちらしなどが提供されることもあります。今回の保護者アンケートでも「給食」は100%の満足度です。
給食のりんごなどは、保育士が子どもたちの前でむいています。切り口を見せたりうさぎの形にしたりして、子どもたちも楽しんでいます。子どもたちが園庭で育てた野菜もそのクラスの給食に出され、量が多ければ園のみんなで味わいます。また、幼児を中心に自分で料理を作る「クッキング」を子どもたちはとても楽しみにしています。
「クッキング」では、季節感のある調理をしたり、調理器具の扱い方を覚えたりしますが、子どもたちが作りたいものを作ることも職員は応援しています。例えば、リンゴ狩りに行った子どもの話から、「アップルパイを作りたい」との声に応えて、アップルパイ作りを取り入れたり、クッキーを焼いて、「お菓子の家」を作ったりしています。栄養士や保育士が食育として取り組む調理のほかに、長い時間をかけて干し柿作りや味噌作りなど伝統的な食べ物を自分たちで作ることもしています。
園は「食べることは生きること」として食事を大切にしていて、それを楽しく実践しています。
【3】近隣や保護者会との関係が良好です
園は、古くからの住宅地に近接していますが、散歩に行く子どもたちは、近所の犬の名前を知っていて呼びかけたり、路地にしゃがんでお年寄りと話をしたりしています。園も、芋ほり遠足をして、掘ったお芋を近所に配ったり、給食試食会を夕方に開き、近所の人も園内に入って給食を試食できるようにしたりしています。近所の人も園に飾るように鉢植えの菊を届けてくれたりします。
公園遊びで近隣の子が来ると、子どもたちは自然に一緒に遊んでいます。その子どもの付き添いの祖母からは、「園開放に行くこともあるが、よくお世話をしてくれる」と聞きました。
父母の会(保護者会)では、園内に「父母の会掲示板」があり、発行した「父母の会だより」や連絡事項を掲示しています。父母の会の活動は活発で、バザーを開催したり、園へのアンケートを取り、対話集会を行ったりしています。園側もアンケートの質問には、丁寧に答えています。
さらに父母の会は、夏祭りに店を出したり、園の大掃除やペンキ塗りなど園の美化に協力したり、交流会を職員と共催するなど、園と保護者とのよい関係がつくられています。
●改善や工夫が望まれる点
マニュアルや記録方法の見直しとその実践
職員は子どもを大切にする姿勢を持ち日々の保育に努めていますが、その指針を定めた各種マニュアルについては、法人のもの、最近決められたもの、長年累積されたものなど分散化しています。これらを簡潔に必要なことをまとめた業務マニュアルとして整備し、職員が日々活用することで、保育の基本をさらに徹底することが望まれます。
安全点検等の記録はありますが、その結果、不備のところをどのようにするかの対策は十分ではありません。また清掃もそれぞれ担当の保育士がしていますが、どの場所も漏れがないようにするために、チェック表などを用意することが望まれます。
園長・主任は、日頃から気さくに保護者の相談を受けていますが、その記録や、職員の目標設定シートなどもさらに書式を整え、継続的に記録していくことが期待されます。